※この記事は住環境計画研究所・取締役研究所長の鶴崎敬大の回顧録をインタビュー形式で再構成したものです。
そうですね、入社4年目からの10年間では20代後半から30代後半で、役職的にも全体が見える立場ではなかったのですが、プロジェクトの実施背景として、地球温暖化問題が位置づけられることがとても多くなっていたと思います。
個人的にもっとも印象深いのは、前回の記事で紹介された住宅用太陽光発電プロジェクトのフォローアップ事業として、2001年から始まったクリーンエネルギーライフクラブ(CELC)の事業です。計測システムが撤去された後も、パワーコンディショナーに表示される発電量を毎月記録していただき、それを私たちが評価して、太陽光発電の長期的な性能を見ていきました。性能が低下したシステムについては、現地調査を実施し、メーカーにも協力を仰ぎ、課題を議論しました。
CELCと並行して、隙間時間を使った自主研究のような形で、ソーラークリニックというサービスを立ち上げて、一般の太陽光発電システムユーザーの発電性能を簡易的に評価する仕組みを作りました。太陽光発電は天候次第の発電システムですから、きちんと発電しているのだろうか、というユーザーの不安に対応しました。2009年の余剰電力買取制度や2012年の固定価格買取(FIT)制度開始後は登録ユーザー数が増え、ピーク時にはアクティブユーザー数が5,000件近くに達しました。設置事業者の方が、お客さんのデータを代行登録するケースもありました。CELCの活動のように現場に関わることはありませんでしたが、単純な施工ミスを早期に発見したこともあります。商用サービスに発展させることはできず、2020年3月でサービスを終了しましたが、成果をエネルギー・資源学会や建築学会で発表し、論文にまとめました。
簡単に総括できる話ではないのですが、私自身はCELCのプロジェクトやソーラークリニックの運営を通じて、住宅用太陽光発電という黎明期にあった商品が市場で鍛えられ、徐々に品質や総合的な技術力を向上させていく過程を垣間見ました。最近、太陽光発電は中国に席巻されていると言われていて、確かに太陽電池市場はその通りなのですが、発電システムの設計・施工、商流の構築、再利用・リサイクルの体制の確立など、技術システムとして成熟してきたと思います。さらに蓄電池システムとの統合、環境価値の評価、初期負担ゼロの導入などのサービスの発展をみると、今後も益々発展していくと感じます。こうした総合的な技術力は国や地域に固有のもので、この過程で生まれる付加価値は、簡単に外国企業に持っていかれるものではないと思います。一方、大規模発電システムによる自然破壊は見直しが必要で、その観点からも住宅・建築物での利用が進んでほしいと思います。
HEMS実証試験のプロジェクトが思い浮かびます。2001年度からNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業として、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメントシステム)に関する実証事業が全国各地で始まり、私たちは三菱電機さんを幹事とするコンソーシアムに、東京電力さんとともに参画しました。
その通りです。3年間のプロジェクトで、首都圏の集合住宅に住むファミリー世帯にモニターになっていただき、三菱電機さんがHEMSの開発、実験フィールドの提供(社宅)、実証事業の統括を、東京電力さんがHEMS基本仕様への助言、実験フィールドの提供(社宅)などを担当されました。私たちは省エネ効果の評価とそのために必要となる導入前のエネルギー消費量の計測、対照群の世帯での計測、アンケート調査などを担当しました。
手間をかけずに省エネを実現するコンセプトでしたから、人の不在になった場所でエアコンの運転を抑制・停止したり、照明をオフにしたり、といった自動制御が導入されました。大胆な試みとして、冷房時に温度設定を少しずつ上げていく(暖房時は下げていく)という制御もありました。その制御が気に入らなければキャンセルできるのですが、翌日には制御が復帰するので、クレームもあったようで、調整の上限・下限温度をカスタマイズできるように変更されました。実証を進めながら、改良や機能の追加が行われました。
とはいえ、制御の省エネ効果はそれほど大きくないことが予想されたので、エネルギー消費の見える化で、モニター家庭に気づきを与えることがポイントとなりました。
標準的な機能としては、現在の消費電力がわかる、消費履歴がわかる、月間目標との関係がわかる、というものでしたが、これらだけでは、どのように省エネに取り組むかは、家庭任せになってしまいます。
モニター家庭の半分は電気温水器を使用していたのですが、データを確認していくと、沸き上げ温度の設定を見直すだけで、かなり削減できそうでした。そこでHEMSのレポート機能を使って、定期的にアドバイスを送ることにしました。
一律に、「湧き上げ温度を下げてみましょう」と言われても、「入浴中に湯切れになったらどうするのか」と不安になるでしょうから、家庭ごとの分析結果をもとに、「もし、先月の温度設定が“低”だったとしたら、タンクのお湯の残量は平均〇L、最低〇L、湯切れの発生は〇日でした。」という形にしました。これで安心できた家庭は、温度設定(高・中・低の3段階)を緩和してくれました。これは明らかに効果がありました。
例えば、待機電力です。時刻別の家全体の電力消費量が計測されていて、さらに冷蔵庫は単独で計測されていたので、冷暖房が不要になる10月の深夜の電力消費量を集計して、冷蔵庫を除いた分を「待機電力」と見なしました。これをもとに、「モニター家庭平均では〇Wですが、あなたのお宅は〇Wです」とお伝えして、常時通電している機器の使用の見直しを促しました。
考えるきっかけにはなったようですが、電気温水器のように明確な効果を見出すのは難しかったです。ただ、他の家庭と比較するのは効くのではないかと思いました。同じ社宅に住む家庭間で、生活水準や家族構成も似ているだろうという推測が働くなかで比較されるわけですから。
HEMSの機能改良が進み、画像付きのレポートを送れる仕様になったタイミングで、他の家庭と電力消費量を比較するグラフを作成して、定期的に送付するようになりました。家全体の消費量と、エアコン、冷蔵庫など、どこの家庭にもある機器の消費量です。
期待通り、反響がありました。モニター家庭に集まっていただいた座談会で、「こういうのは見たことが無かった」、「毎月、最初に見る」、「なんでうちが一番多いのか?せめて二番になりたい」、といった声が聞かれました。冷蔵庫が一番多いと示された家庭は、その後、買い替えたと記憶しています。アンケート調査結果でも、省エネに役立つ情報として、一般的な省エネ情報と比べるとずっと好評でした。
最終的に省エネ効果は5.8%と評価しました。このうち電気温水器だけで3.5%も貢献し、自動制御の貢献は0.6%に過ぎません。コンソーシアム内で何度も議論し、いろいろと工夫も重ねたつもりでしたが、省エネの価値だけでHEMSを事業化するのは大変だと思いました。
よくあることですが、開始までが大変だった記憶があります。モニター家庭の募集は、アンケート調査の形式で行ったものの目標件数に届かず、最後は候補世帯を訪問して、玄関先でお願いしました。私は1998年から1999年にかけて、北海道庁のプロジェクトで一般のご家庭(11世帯)を1年間、ほぼ毎月訪問して、エネルギー消費量の調査をした経験があったので、ご家庭を訪問することには慣れていましたが、北海道の時は、自ら申し込んだ方々でした。特に希望していない人にお願いをするのは緊張しましたが、多くの方は快く引き受けてくださいました。社宅にお住まいで会社の実験への協力要請を断りづらかったのかもしれません。
実験計画でも困難がありました。住環境計画研究所でのリーダーだった村越さん(村越千春さん、元・取締役副所長)が、省エネ効果を評価するためにHEMSを導入しない家庭(対照群)を設定しようとしたものの、HEMSを導入しない家庭のための調査経費は認められない、という指摘がありました。エネルギー消費量は気象条件や生活状況で大きく変化するので、導入前後の比較だけで省エネ効果を評価するのは難しいことを説明して、最終的には認めてもらえたのですが。もっとも、様々な制約から実験の規模は20件(対照群も20件)に留まったので、統計的に評価することは困難でした。
苦労話ではないのですが、すべてオンラインのデータ回収という訳にはいかず、ヒアリングも必要で、定期的にモニター家庭を訪問していました。特に思い出深いのは、ヒアリングの際に「どうしてもテレビを消せない」と話していたAさんのことです。就寝中をのぞいて在宅している間は常時テレビが付いていました。いわゆる「ながら見」で、いつもテレビの前にいる訳ではありません。そこで、次に訪問した時に小型のポータブルテレビを持って行き、替わりに使ってみていただけませんか?とお願いして、置いてきました。翌月、感想を聞いたところ、「やはり駄目です。画面が小さすぎて、人の存在感がありません」とのことでした。
この話には続きがあって、ある時、Aさんが「子供のいない専業主婦は日中、何をしているんでしょうね。家事なんて午前中で終わります」とおっしゃっていました。自分には経験のない状況ですから、苦し紛れに「仕事か趣味か地域活動をされているのでは?」とお答えして帰りました。その後、しばらくして「パートタイムで働くことにしました」というご報告がありました。そこで初めてAさんは社会との関わりというか、つながりを求めていたことに気が付きました。得意気に小型テレビを持っていった自分が恥ずかしかったですね。使われたエネルギーではなく、エネルギーを使っている“人”の方を見ないと駄目なのだと反省しました。もちろん、テレビの電力消費量は減りました。
NEDOで私たちのプロジェクト以外のHEMS実証実験も含めて、計5地区のデータを二次的に解析して、省エネ効果を評価するプロジェクトが立ち上がり、電力中央研究所さんと共同で実施しました。個人的には、他の研究機関との共同プロジェクトは初めてだったので、新鮮な気持ちで取り組みました。バラバラに実施されたプロジェクトで取得されたデータを評価することには限界もありましたが、他のプロジェクトの状況を知る良い機会になりました。この二次解析のために、四国電力グループのOpen PLANETを視察し、ヒアリングをする機会があり、大変刺激を受けました。省エネも含めて生活全般のサービスインフラにしようと工夫されていて、HEMSの事業化の方向性が見えた気がしました。
二次解析事業の最後の年にはHEMS関連の特許調査を行うことになり、私たちにはまったく経験がないことだったので、HEMSプロジェクトで三菱電機のリーダーだった山田淳さんに相談し、専門家をご紹介いただきました。山田さんには、その後も様々なプロジェクトで、エコーネットコンソーシアムや三菱電機さんへのヒアリングにご協力いただきました。一緒に取り組んだプロジェクトがご縁となって、仕事が続いていくことは、嬉しいものです。
こうした経験もあって、いくつかの雑誌や媒体でHEMSの記事を書きました。電子情報通信学会の知識ベースS4群(4編1章)に「HEMS」として寄稿した記事は、全体の完成が遅れ、公開時には旧聞に属する内容になってしまいましたが、今(2023年10月時点)でも閲覧できます注1。
注1)https://www.ieice-hbkb.org/files/ad_base/view_pdf.html?p=/files/S4/S4gun_04hen_01.pdf#page=20
そうですね。HEMS実証試験のプロジェクトが終わった頃ですが、2004年6月に渋谷区広尾から移転しました。顧問の室田泰弘先生のご実家があった場所に建てられたビルで、築15年くらいだったと思いますが、先生のご紹介で入居することになりました。ちょうど新しい大型プロジェクトが立ち上がった時期で、手狭になりそうだったので、とても良いタイミングでした。
東京のど真ん中ですから、これより真ん中には皇居しかない、なんて冗談が聞かれました。お客様を訪問する際、それまでは1時間弱を見込んで出発していたところ、ここは交通の利便性もよく、30分程度で済むようになりましたし、中には徒歩で行けるところもあります。都心ですが非常に落ち着いた環境にあり、研究所らしさが増したと感じました。
オフィス面積もそれまでの2倍くらいになり、広々とした空間で快適になりました。当時の所員数は12~13名だったと思います。
移転にあたって、レイアウトの検討や、移転の手続き、家具の発注など、ほとんど村越さんがやってくださって、とても大変そうでした。「次に移転するときは頼むね」と言われました。それ以来、移転はしていませんが、時々、改造をしています。テナントビルですが、自己負担でLED照明に切り替えたり、打ち合わせスペースを増やしたり、といったことです。
2004年度から3年間実施された経済産業省(資源エネルギー庁電力基盤整備課)の事業で、電力需要がピークになる夏季や冬季の需要構造を詳細に把握するために大規模な調査が行われることになりました。2003年の夏に向けて、東京電力の原子力発電所がすべて停止する事態になって、節電の必要性が高まったのですが、事業者や国民に呼びかけるにあたって、しっかりしたデータが無いことに苦労されたようで、データベース構築のニーズが高まったようです。幸いにも2003年は冷夏だったので、深刻な事態には成りませんでした。
非常に大きなプロジェクトなので、単独では受けきれません。ここでも電力中央研究所さんと共同で取り組むことになり、産業部門、業務部門、そして家庭部門の一部を電力中央研究所さんが、家庭部門の大部分を私たちが担当することになりました。電力のピーク時の需要構造を知るには、実際のご家庭で時刻別に電力消費量を計測する必要があり、初年度は私たちだけで、首都圏と阪神圏の合計400件の家庭を募集することになりました。
最初に企画の内容を聞いたときは驚いたというか、本当にできるのですか?という気持ちでした。それまでに私たちの実施した計測調査の規模は、大きくても20件くらいだったので、従来のやり方ではとても対応できないと感じました。協力家庭の募集、計測器の手配、計測器の設置工事の調整、社内の体制づくりなど、すべてのオペレーションを一から考え直すことになりました。
夏の冷房需要が増える時期のデータが必要ですから、夏までに設置工事を終えることが望ましいのですが、計測システムは新規開発ですし、設置工事の体制も考えると現実的には厳しく、7月中旬から設置を開始し、概ね8月末までに完了させることを目標としました。
計測システムは1990年代からお付き合いのあったタケモトデンキ(現・ハカルプラス)さんに発注しました。まだインターネットの常時接続が普及途上だったので、PHS通信でデータ回収する仕組みを提案いただき、ご家庭の通信インフラに依存しない形となりました。通信トラブルの原因特定は簡単になりましたが、PHSは大都市圏でも、特にマンションなどで宅内に電波が届かないことがあり、苦労しました。設置工事の当日に、まず通信の確認をしたのですが、そこで3割の家庭が脱落してしまいました(翌年からは携帯電話通信方式に変更し、脱落は1割未満に減少)。
計測器の設置工事はHEMS事業でお世話になった小野電気工業さんにお願いしました。計測器を分電盤に取り付ける場合、有資格者(電気工事士)にお願いする必要があります。脱落も多かったので、最終的に600件くらいの日程調整が必要になり、小野電気工業さんも小さい会社で相当大変だったと思いますが、目立ったトラブルもなく、やり切っていただきました。
さすがに400件全ては無理なので、家電製品にも計測器を設置する予定だった60件の家庭(首都圏、阪神圏30件ずつ)の訪問のみ同行することとしました。それでも異例の体制で、ほとんどの研究員が応援参加する形となりました。担当する週には予定を入れずに、日程を確保してもらいました。一番大変なケースでは、土曜日も含めて6日間連続で1日3件訪問することになりました。また工事の時間帯は、オフィスに設置したデータ回収用PCとの通信確立を確認する必要があるので、社内にも常時2名を配置しました。私自身は主にオフィスで全体を見る役割でしたが、阪神圏での工事で一週間、現場に出ました。2004年の夏は一転して猛暑となり、とにかく暑かった記憶があります。
人手が足りないことは確実だったので、プロジェクト専任の研究助手を2名採用しました。嬉しいことに、とても優秀な人が来てくれて、本当に助かりました。2年目からは3名体制となり、研究員と一緒に設置工事も担当してくれました。
スケジュールの面で本当に厳しいプロジェクトでしたが、関係者全員が尽力して、何とかほぼ目標通りに完了できました。2年目、3年目は地域を拡げて、最終的に全国6地域で計800世帯を超えるデータを取得しました。実施期間中にもいくつかの問題が生じましたが、その都度、できる限りの対応を心掛けました。
新たな知見を生み出すことを要求された訳ではないので、成果は大規模データをおおむね目標通りに取得できたことですね。このプロジェクトでは、電力中央研究所さんの下請けという立ち位置でしたので、電力中央研究所さんにデータと基本的な集計結果(時刻別の電力消費パターン、ピーク時の機器別構成比など)を提供し、電力中央研究所さんが電力消費の気温感応度などの分析を実施しました。
私たち自身もエネルギー・資源学会で発表したり、2006年にロンドンで開催された省エネルギーの国際会議EEDAL’06での冷蔵庫の電力消費実態に関する報告(Actual Energy Consumption of Top-Runner Refrigerators in Japan)でデータを活用したり、データの活用を進めました。東日本大震災の後、緊急に節電対策を検討することになった際も、参照した記憶があります。
これも2004年度だったと思いますが、当時、主任研究員として住環境計画研究所に在籍していた岩船由美子さん(現在、東京大学生産技術研究所 教授)が担当したプロジェクトの中で、冷蔵庫の電力消費量を試験室で計測したのですが、カタログや本体に表示されている電力消費量をどうしても再現できないという問題がありました。それも少しの差ではなく、2倍から3倍にもなっていました。原因を探っていくと、冷蔵庫の電力消費量の計測方法を定めている当時のJIS(日本産業規格)では、冷蔵庫内にある温度補償ヒーターや製氷装置給水パイプの凍結防止ヒーターなどをオフにして計測することになっていました。しかし、それは実際の使用条件とは異なります。冷蔵室と冷凍室では庫内温度が20度以上違うのですが、境界部分の冷蔵室が冷えすぎて食材が凍ったりしないように、部分的に温めている(温度を補償している)んですね。その分、また冷やすための電気を消費するわけです。
その後、2006年にはJISの規定が改訂され、この問題は解消したのですが、ちょうど同じ時期に、大規模計測プロジェクトで約100台の冷蔵庫の電力消費量データを取得していたので、表示値と実績値を比較したのです。その結果、新しい冷蔵庫ほど、表示値と実績値の乖離が大きいことが分かりました。2002年から2004年製の冷蔵庫12台では2.0倍となりました。
これにはとてもショックを受けました。消費者も自動車の燃費の経験などから、必ずしも表示値通りではないことは理解していると思います。それでも、3割増し程度が許容範囲ではないでしょうか。先ほどお話したHEMSのプロジェクトでは、冷蔵庫の消費量が多い家庭に対して買い替えをお勧めしたことがあり、実際に買い替えた家庭もありました。しかし、期待ほどの効果が得られなかった可能性が高いことが分かり、あの時は申し訳なかったなという気持ちになりました。
こうした問題がありましたが、政府やメーカーは迅速に対応したと思います。EEDAL’06の会議でも、Alan Meier博士から、そのようなコメントを頂きました。その後も冷蔵庫の電力消費量の計測機会は何度かあり、その都度、評価していますが、これほどのことは起きていません。
2008年に35周年を迎えましたが、当時の中上所長は63歳で、長年のお付き合いのある方々も重要な役職に就くようになっていました。私は直接的には関わっていませんが、中上所長や村越さんがアジアESCO会議の運営を、政府機関を巻き込んで進めていくのを見ていました。創業以来、積み重ねてきた経験に、社会的な影響力も加わって、チャンスが増えていたと思います。小さな会社でも大きい仕事をする機会があると感じていました。若手の研究員も志を持って、大きく成長することが期待されていたと思います。
今回ご紹介したのは、私が個人的に深く携わったプロジェクトの一面に過ぎません。この時期には2010年代以降につながる種がいくつも蒔かれていたと思います。例えば、HEMSのところで紹介した、他の家庭と比較するというアプローチについては、同じ時期に環境省の委託事業で、地球温暖化対策地域協議会を通じた家庭の温暖化対策診断モデル事業として、複数の地域で試行されました。やはり他の家庭と比較されると反応が違ったようです。その後、この“他世帯比較アプローチ”は海の向こうの米国で洗練され、商用サービスに発展していきます。このあたりは今後の連載でお読みいただけると思います。
(第8回に続く)