目的:
2019年11月より住宅用太陽光発電の固定価格買取期間が終了する世帯(以下「卒FIT世帯」と示す。)が生じている。これらの世帯では、余剰電力の買取価格が家庭の電力料金単価より安価な水準に下がり、太陽光発電の発電電力を売電するより自家消費した方が経済的になるため、蓄電・蓄熱設備の導入が進む可能性がある。こうした背景の下、本調査は卒FIT世帯に対するアンケートにより卒FIT後の蓄電・蓄熱設備の導入実態把握を目的とする。
方法:
2020年1月に、戸建住宅に住む卒FIT世帯に対しインターネットアンケートを実施している。回収数は2,415件である。調査項目は基本属性をはじめ、蓄電・蓄熱設備(蓄電池、ヒートポンプ給湯機、電気自動車、V2Hシステム)の導入状況、導入時期、導入理由、運転モード、設備の満足度などである。この他に売電先の変更状況、電力使用の日中シフトの状況等についても調査している。なお、全量売電とダブル発電の世帯は調査対象外としている。
結果:
卒FIT世帯における蓄電・蓄熱設備の導入率は、蓄電池が21.0%、ヒートポンプ給湯機が4.3%、電気自動車が3.3%、V2Hが0.5%である。「卒FIT」が導入理由である割合は、蓄電池の導入世帯では45.3%となっている。一方、ヒートポンプ給湯機の導入世帯では24.0%に留まっており、「光熱費削減」「給湯器買換えのタイミングだった」がそれぞれ40.4%と比較的高い。このように、蓄電・蓄電設備の導入状況や導入理由は機器ごとに異なる実態が明らかになっている。
- 論題
- 卒FIT世帯の蓄電・蓄熱設備導入状況に関する調査
- 著者
- 岸田 真一, ユウローリン, 中上 英俊
- 掲載誌
- BECC JAPAN 2020, 2020年8月