(1)目的
近年、家庭の省エネ推進手法として、HEMSの導入が全国的に進み始めている。既存のHEMSは電気を対象としたものが多いが、他方、北海道等の寒冷地の家庭では暖房がエネルギー消費の約半分を占めるため、暖房使用状況や温熱環境等を考慮して省エネ行動を促すシステムが有望だと考えられる。本研究は環境省の技術開発・実証の一環として、寒冷地の戸建住宅に着目し、暖房時の室温制御とICTを活用して行動変容を促すことで、快適な住環境とCO2排出削減の両立を目指す。
(2)方法
本実証では、札幌市内の戸建住宅に居住する100世帯を対象に、2017年1月から約1年間に渡り、①情報提供:住環境データ(室温やエネルギー消費量等)のフィードバックや省エネアドバイス提供、②暖房制御:生活パターン(在宅・外出・就寝時)ごとのスケジュール設定や住環境データに基づく温水暖房制御、の2種類の介入を行っている。なお省エネアドバイスは、暖房設定温度の低下や早期の暖房停止を促す際には他の実証世帯と比較する等、行動科学の知見を参考にしている。
システムの導入効果はランダム化比較試験により評価する。具体的には、実証世帯をAT群(①②を両方行う群)、FB群(①のみを行う群)、CT群(①②のいずれも行わず、計測のみを行う群)の3群へランダム割付により分類し、群間のガス消費量や暖房の使い方の差を確認する。
(3)結果
介入前後の冬期ガス消費量の省エネ率は、情報提供と暖房制御を両方導入したAT群が3.2~3.7%、情報提供のみ導入したFB群が2.3~2.6%となった(いずれも有意水準5%で有意差あり)。介入後の暖房の使い方に関しては、AT群では9割近くの世帯が暖房制御を利用するようになったこと、FB群では手動・タイマー制御による暖房停止をするようになった世帯が1割ほど増加したことが確認された。このことから、今回開発したシステムは冬期の暖房エネルギー消費量の削減に有効であったことが示唆される。
- 論題
- 暖房制御と見える化システムを備えた省エネサポートシステムの開発 -システム導入による省エネルギー効果と暖房の使い方の変化-
- 著者
- ユウ ローリン,鶴崎 敬大,中村 美紀子,平山 翔,中村 充,菊地 準,徳田 彩佳
- 掲載誌
- BECC JAPAN 2018,2018年8月