夜景の名所として知られる函館では、夜景を構成する照明施設のLED化への関心が高まっている。LEDは環境性と経済性に優れた照明である一方、照明設備の切り替えには多額の初期投資が必要であり、企業や自治体のみで賄うことは難しい。そこで、国内外から函館山に訪れる多くの観光客から資金を集めるという試みが検討されている。本研究では、LED化に対する資金提供意思額(Willingness to Accept)に対して、公共財への協力や寄付行動に関連する心理要因がどの程度影響するのか、また国内と国外からの観光客でそれらの要因の効果に違いがみられるのかについて検討することを目的として、函館ロープウェイ山頂駅を訪れた国内外からの観光客を対象に質問紙調査を行い、1012の有効回答を得た。分析の結果、資金提供の意思は観光客の国籍を問わず高く、募金活動には一定の成果がみられる可能性が示唆された。また、国内観光客には夜景に対する愛着や実行可能性評価、海外観光客には評判や主観的規範がそれぞれ提供意思額に影響していたことから、国内観光客に対しては函館の価値や募金の手軽さを伝える取り組みを、海外観光客に対しては資金を提供することがその人の評判につながるような仕組みをそれぞれ取り入れることで、より多くの寄付や資金提供を受けることにつながる可能性が示唆された。
- 論題
- 函館夜景LED化に対する資金提供意思額の規定因
- 著者
- 小林翼・安保芳久・中俣友子・飯野麻里,横山実紀,森康浩,大沼進
- 掲載誌
- 日本社会心理学会第57回大会発表論文集, p. 83. (査読なし)