いよいよ京都議定書の目標年がやってきた。今年に入ってから、テレビや新聞で取り上げられない日はないくらい、地球温暖化問題は日常的なテーマになってきたようだ。しかし、京都議定書が交わされたのはもう10年以上前のことだから、いささか話題になるのが遅すぎたと言っても良いだろう。それでも、このようにして問題が日常的になり人々の具体的行動へとつながることが重要だ。
さて、地球温暖化防止につながる環境負荷の低いライフスタイルとなるとどうだろうか?私たちの日常生活はどっぷりとエネルギー漬けの毎日だ。このようなライフスタイルになったのはほんのこの50年位のことなのだとは信じられないくらいだ。
最近ベトナムでの省エネルギーのお手伝いをする機会を得た。ベトナムの農村部の家庭での電力消費量はわが国の1/10程度の水準である。豊かな水田が広がり、そこかしこで家族総出の農作業が続いている。牛は貴重な農作業用動力源だ。すべてが太陽の恵みであふれている。農村部の田園風景は40~50年ほど昔の宮崎を彷彿とさせるのどかな情景がつながっている。
この国では今、先進国へのキャッチアップと生活水準の向上に向けての不断の努力が傾注されている。当然それに伴って急激なエネルギー需要の増大が生じている。ベトナム全土での電力の伸びは年率18%にも達するという。この国の経済水準、生活水準がわが国のレベルになるには、今後どれだけのエネルギー供給が求められるのだろうか?逆に、私たちの暮らしが今のベトナムの時代に戻ることは可能であろうか?きっと無理だろう。しかし、温暖化を食い止めるには、相当思い切った脱炭酸ガス生活が求められていることは間違いない。きっと両者の目標の中間点あたりに着地点を求める必要がありそうだ。となると、わが国の優れた省エネルギー製品を最初から途上国で使ってもらえるような仕組みが必要だろう。一方で、われわれは大幅に現在の利便性・快適性を再点検し、さらなる省エネルギー製品の開発を急ぐとともに、ライフスタイルのパラダイムを大きく変える必要がありそうだ。
そう遠くない時期にきっと、24時間型の生活は幕を閉じるに違いない。既に欧州に見られるように、すべての商店が定時で閉店したり、日祭日は休みだったりするような社会が到来するだろう。それは決して後退を意味しない。
太陽と共に生活を組み立てる「サマータイム」もきっと注目されるに違いないと期待したい。夏の暑い時期や冬の寒い時期のまとまった休暇取得制度ももっともっと定着して良いのではないだろうか。これからは人口も減少局面にあることだし、教育システムも受験受験で振り回されるような時代ではなくなることも期待したい。家族そろってのまとまった休暇が都市と田園地域との交流につながることもやっと実現する時代になっていくのだろう。いつの間にか悪役にされてしまった「リゾート」ライフもやっと日の目を見る時代を期待したいが、まだまだ依然無理なのだろうか?いや決してそんなことはないだろう。
このように考えてみると、地球環境に優しいライフスタイルへの準備は、既に着々と積み重ねてきたように思われる。違っているのは過去のシミュレーションがすべて経済価値一辺倒の価値基準だったところにありそうだ。どうやら、環境負荷の少ないライフスタイルとは、われわれの価値観を少しだけ方向転換してやれば手が届くところにあるのではないだろうか。サマータイムにしろ、リゾートライフにしろ、キーワードは「自然との共生」にありそうだ。環境負荷の低いライフスタイルとは日本人に最も適した解を再発見できる大きなチャンスととらえたいものだ。