- エネルギー消費量を推定するためには出力に応じて変動する効率や送水ポンプや排気ファン等の補器の消費電力を把握する必要があるが、日本工業規格(JIS)に見られる現行の試験方法では定格出力に対応した効率を算定するのみである。住宅における負荷および熱源機にかかる出力は、低負荷領域から高負荷領域まで幅広く分布し、年間のエネルギー消費量あるいは年間平均効率等を求めるためには定格点における効率だけでは不十分であるといえ、様々な出力に対応した効率曲線を導出することが必須である。また、機器によっても効率曲線は異なり、かつ、新しい機種が市場に投入される度にそれらの効率曲線を決定する必要があることから、効率曲線決定に際し多大な労力と費用が掛かるのを防ぐために的確に性能を表現する指標とそれらの指標から効率曲線を展開するための方法を準備することが必要だといえる。そこで効率を表す指標から効率曲線導出を検討するに際し、熱交換器や放熱ロスなど熱収支バランスを解いた物理モデルを導入し、効率曲線の導出を行った。本調査ではガス熱源機のモデル化に関する検討結果について報告する。
なお、機種によっては、暖房用の温水(低温暖房)と浴室乾燥機などに用いられる温水(高温暖房)の 2 つの出力帯を有する熱源機があるが、本報では、暖房の用途に仕様される温水出力のみを対象とするため、モデル化を行うに際し低温暖房のみを対象に検討を行った。
本調査により、ガス熱源機の従来型と潜熱回収型において、暖房出力はガス消費量の一次関数で精度よく推計でき、熱交換器交換効率、筐体放熱ロスを同定することができれば、効率曲線を算出することができることが分かった。今後は熱交換器交換効率、筐体放熱ロスの更なる分析、同定方法の検討、また、本調査結果は単一機種による結果であるため、他の機種での精度検証についても行う予定である。
- 論題
- 住宅における温水暖房用燃焼系熱源機のエネルギー消費性能の評価 : (第2報)温水暖房用ガス熱源機の評価実験とモデル化
- 著者
- 中村 美紀子 , 水谷 傑 , 三浦 尚志 , 藤原 陽三
- 掲載誌
- 空気調和・衛生工学会大会学術講演会論文集, pp.673-676, 2012.08