(1)目的
北海道では運輸部門の温室効果ガス排出量のうち自家用車を含む自動車からの排出が多くを占めており、公共交通等の移動手段への転換を含めた対策が求められている。他方で、地方部を中心に既存の交通手段の廃止や縮小に伴い、市町村が住民の移動手段の確保を目的としたデマンド交通等の拡充を図っているが、自家用車移動が中心となっている住民に対して利用を促すための情報発信が課題となっている。そこで、本事業ではデマンド交通の利用者の増加と相乗りに伴うCO₂排出削減を目的とし、ナッジを活用した情報発信手法の開発とその効果検証を実施した。
(2)方法
町内でデマンドバスを運行している北海道知内町を実証フィールドとし、町内会単位で対照群と実験群をランダムに割り付けた。次に、ターゲットとなる利用者と利用までのボトルネックを想定してナッジを活用したデマンドバス利用促進チラシを作成し、実験群の町内会にのみ広報誌に同封して配布した。チラシ配布後のデマンドバス利用意向と実際のデマンドバス利用者数をそれぞれアンケートと運行データにより取得し、実験群と対照群を比較することにより効果検証を行った。
(3)結果
乗車データを分析した結果、ナッジを活用したチラシを受け取った地域ではデマンドバスの延べ利用回数が35%増加した。また、アンケートの結果ではチラシを受け取った人はデマンドバスへの理解度が向上し、またデマンドバスの主な利用者層である80歳代以上のデマンドバス利用意向が高まっていた。以上の結果から、ターゲットに適したナッジ手法を用いたことにより、チラシがデマンドバスへの関心を高め、デマンドバスの利用増加につながったと考えられる。
本研究は北海道経済部委託事業「令和5年度脱炭素社会に向けた行動変容促進事業」の一環として、北海道知内町の協力を得て(株)住環境計画研究所が実施した成果である。
- 論題
- ナッジを活用したチラシによるデマンドバス利用促進実証
- 著者
- 小林 翼、平山 翔、土屋 友和
- 掲載誌
- BECC JAPAN 2024