本研究は現況における空家の地域内分布を全国的に比較可能なかたちで把握するとともに、その将来的な趨勢変化の推計を試行した。建物ポイントデータの住宅数と国勢調査の世帯数の差分が住宅・土地統計調査の空家数に相当すると想定し、建物ポイントデータにもとづく住宅数が住宅・土地統計調査の住宅数と近い値になるよう対応付け、現況における建て方別空家数を3次メッシュ別に推計した。本研究による住宅数の対応付けにより、住宅・土地統計調査の住宅数を約95%カバーする住宅数を建物ポイントデータから抽出することが可能になった。また、本研究の手法を用いて千葉県を対象に空家の地域内分布を推計した結果、県の東部の海岸沿いで40%を超える空家率となるおそれがあること、市域の中でも高齢化が進んでいる地域での空き家化が進むことを図示した。今後、建物ポイントデータ外に存在する住宅や建物ポイントデータ内の住宅系建物以外に存在する住宅について精査することなどが課題である。
- 論題
- 空家の地域内分布に関する現況及び将来推計: 世帯数と住宅数の差分に着目して
- 著者
- 石河 正寛, 松橋 啓介, 有賀 敏典, 金森 有子, 栗島 英明
- 掲載誌
- 都市計画論文集, 51(3), 833-838, 2016.