(1)目的
北海道では灯油暖房によるエネルギー消費が家庭からのCO₂排出量の多くを占めることから、市町村が住民に対して効率的な暖房利用に向けた行動変容をどのように促すかが課題となっている。本実証では市町村が配布する広報誌を通じて、暖房設定温度の変更を促す情報発信を行い、その効果をフィールドで検証することを目的とした。
(2)方法
北海道の道南圏と道北圏から都市規模が同程度(人口5万人未満)の4町を選定し、各町の世帯を町内会ごとに実験群と対照群にランダムに分類した。実験群(ナッジ版群)にはナッジを使用し、対照群(通常版群)にはナッジを使用せずに、暖房の効率的利用を促すメッセージを記載したチラシを作成し、それぞれ広報誌にチラシを折り込み対象世帯に配布した。その後、チラシから誘導したアンケートの回答率と、アンケートでの暖房の省エネ意向を群間で比較することでナッジを活用した介入の効果を検証した。
(3)結果
4町の約1万4千世帯に情報発信を行った結果、ナッジ版群のWEB調査回答率は2.8%と、標準版群(2.2%)と比べて1.3倍高く、統計的にも有意であった。また、ナッジ版チラシで推奨した「厚着をして設定温度を控えめにする」という対策について昨冬の実施状況と今冬の実施意向を⽐較したところ、4町のいずれにおいてもナッジ版群の⽅が標準版群よりも上昇率が⾼く、ナッジにより省エネ意向が⾼まっていることが確認された。
本研究は北海道環境生活部委託事業「令和4年度脱炭素社会に向けた行動変容促進事業」の一環として、北海道松前町、知内町、東神楽町、美瑛町の協力を得て(株)住環境計画研究所が実施した成果である。
- 論題
- 自治体広報誌を通じた暖房の省エネ行動促進実証
- 著者
- 平山翔、小林 翼、土屋 友和
- 掲載誌
- BECC JAPAN 2023