株式会社住環境計画研究所(東京都千代田区、代表取締役会長:中上 英俊、以下「住環境計画研究所」)と、株式会社GOYOH(東京都新宿区、代表取締役:伊藤 幸彦、以下「GOYOH」)は、ナッジ*1等の行動科学の知見を活用した「オフィス向けの脱炭素のための行動変容プログラム」(以下「本プログラム」)を開発し、オフィスのCO2排出量を削減する実証実験(以下「当実証実験」)を2022年度の環境省の実証事業*2の一環として2023年1月16日~2023年2月10日の期間にかけて行いました。
当実証実験は、GOYOHが運営する不動産ESGプラットフォームサービスの「EaSyGo」が導入されている、ケネディクス・プライベート投資法人(東京都千代田区、執行役員:市川 徹志)およびケネディクス・オフィス投資法人(東京都千代田区、執行役員:桃井 洋聡)が保有するオフィスビル「KDX豊洲グランスクエア」にて実施しました。
当実証事業は、日本初となるテナントビルの従業員にナッジ等で行動介入し、CO2削減効果を定量的、定性的に実証する研究となります。
*1 ナッジ(Nudge)は、「ひじで軽くつつく、そっと後押しする」を意味する英単語。人間の行動特性を踏まえて制度や選択肢を設計して、社会を望ましい方向へ導く手法を示す用語。
*2 環境省「令和4年度 ナッジ×デジタルによる脱炭素型ライフスタイル転換促進事業」
■背景
オフィスで利用されるエネルギー消費量の約60%が、オフィスを利用するテナント企業の専有部での消費と言われています。近年、法人不動産オーナーは国際的なESG投資の流れや、政策対応ニーズから保有物件の脱炭素化に向けた努力が必要になっています。またオフィスに入居するテナント企業は自社の脱炭素目標のために、入居するオフィスビルや従業員との「働く場」での連携が課題となっています。テナントビルの脱炭素化のためには、テナント企業および従業員の協力が不可欠ですが、効果的な行動変容促進策が明らかになっていないことが問題としてあげられてきました。そのため、脱炭素社会実現に向け、オフィスのテナント企業とその従業者の省エネ行動を定着させるためには、不動産オーナーや運営者によるテナントの行動変容への有効性のある補助・介入手段が求められます。
■オフィステナントの脱炭素化を促進する「ナッジ x デジタル」ゲーミフィケーション
住環境計画研究所とGOYOHは上記の社会課題を解決するため、環境省「ナッジ×デジタルによる脱炭素型ライフスタイル転換促進事業」の一環として、ナッジを活用したゲーミフィケーションによるオンラインプログラムを、ビルオーナーであるケネディクス・プライベート投資法人およびケネディクス・オフィス投資法人と連携してKDX豊洲グランスクエアに入居するオフィステナントへ提供する実証を行いました。
本プログラムでは、KDX豊洲グランスクエアに導入されているGOYOHの提供する「EaSyGo」サービスを活用し、「グリーンオフィスチャレンジ」と銘打ったナッジやゲーミフィケーション、効果の見える化によるモチベーションの向上等の工夫を盛り込んだオンラインプログラムを、ビル内の入居企業様とその従業員の皆様に向けて提供し、期間中、毎日更新される脱炭素へ繋がるアクションについての情報介入や機会提供による行動変容を促すことによる効果を測定しました。
当実証実験では、KDX豊洲グランスクエアに入居する企業に勤務される多数の皆様のご協力をいただき、また、入居企業のリコーリース株式会社様、株式会社IHI回転機械エンジニアリング様はご賛同企業として、企業内での周知・啓発などより一層積極的なご協力をいただきました。
■実証実験の結果
実証の結果、プログラムへの参加率は、友達紹介時のインセンティブをナッジ(損失フレーム)を活用して提示したグループが3.5%となり、一般的な表現(利得フレーム)で提示したグループの1.5%と比べて2.4倍多くなりました。また参加者の脱炭素行動6項目の平均実施率は、実証前後で32%から39%まで向上しました。このうち、最も実施度が高まった対策は、一人で実施できる「離席時のPC使用方法」で、平均17%ポイント実施度が高まりました。
■今後の展開
当実証実験にて得られた結果は、今後の改善のための実証データとして活用し、 さらなる社会実装の検討等に役立てられます。オフィスに留まらず、商業施設や住宅などのあらゆる不動産における、利用者の省エネへの行動変容の重要性や有効性、省エネ行動の普及や、環境意識の向上に貢献してまいります。
またGOYOHの展開する「EaSyGo」サービスを通じて、グローバルな機関投資家や不動産運用会社、高いESG目標を持つテナント企業のための、オフィスでの脱炭素へ取り組むための施策として展開しています。