(1) 目的:
本研究では家庭部門における省エネルギーを促進するため、ECプラットフォーマーの会員情報を活用し、省エネルギーのみならず他の価値(QOL等)も併せながらナッジを活用した情報(バナー広告、キャンペーンサイト)を発信することで、家電の購入や使用における省エネルギーに資する行動変容を促す実験型広報を実施し、その効果を検証することを目的とした。
(2) 方法:
一般消費者に向けて古い家電の買換えの際に省エネ型の製品を選択することを訴求するキャンペーンサイトとバナー広告を制作し、2020年11月から12月にかけてECプラットフォームのユーザーに対しバナー広告を通じキャンペーンサイトへ誘引した。バナーは社会規範、損失回避、デフォルトの変更、タイミングのナッジを活用した4種類と、ナッジを使用していない1種類の計5種類を用意し、対象ユーザーはランダムに1種類のバナーが表示されるように割り振られた。ユーザーの意識や行動はトラッキングデータとWebアンケートにより、サイトへのアクセスからその後商品購入の有無までの一連の行動を対象に調査・分析を行った。
(3) 結果:
約600万人に対してバナー広告を提示したことにより、うち約15万人がサイトにアクセスし、そのうち約3割弱については実際の家電購入につなげることができたと試算された。また、サイトを見た人は見ていない人に比べて省エネ型製品の選択に対する意識が高まっていることが確認された。加えて、バナーに使用したナッジの種類別にみると、家電製品の平均的な使用期間を伝えることで社会規範を喚起させたメッセージが特にサイトへの誘導やその後の意識や行動変容に対して有効であった。
本研究は資源エネルギー庁委託事業「令和2年度省エネルギー促進に向けた広報事業(ナッジを活用した需要喚起型の一般向け情報発信事業)」の一環として、(株)ザッツコーポレーションと(株)楽天、(株)住環境計画研究所が実施した成果である。
- 論題
- Web広報による省エネ家電買換えに対する意識・行動変化の検証[トラッキングデータとアンケートを用いた分析]
- 著者
- 小林 翼, 木岡 史明, 定塚 達郎, 平山 翔
- 掲載誌
- BECC JAPAN2021, 2021年8月