(1)目的
諸外国ではエネルギー事業者が個別の家庭にエネルギー使用状況等の情報提供を行うホームエネルギーレポート(HER)を送付することで、省エネ効果が得られることが実証されてきた。2017年度より実施してきた一連の実証で日本でも同様の成果が得られることが確認されたが、送付停止後の持続性は検証されていなかった。本実証では、HERを前年度まで送付した家庭における、送付停止後1年間の省エネ効果の持続性を検証することを目的とした。
(2)方法
気候(寒冷地・温暖地)と地域(都市部・地方部)の異なる4地域(北海道、北陸、関西、沖縄)を対象に、2017年12月から2020年2月まで継続的にスタンダード版HERと日本版HERを送付した世帯(計8万世帯:2群×1万世帯×4地域)と、RCTにより設定した対照群(計10万世帯:約2.5万世帯×4地域)を比較することで介入効果の持続性を検証した。省エネ効果は介入停止後1年間におけるエネルギー消費量の群間の差から分析した。
(3)結果
HER送付停止後1年間(2020年3月~2021年2月)における地域別の年平均エネルギー削減率は1.7~2.0%であり、実験2年目(2019年3月~2020年2月)の1.7~2.2%と比べて横ばいまたは微減であった。介入停止後1年間の平均介入効果を、実験2年目と比較した省エネ効果持続率は87%~109%に分布し、4地域平均で100%であった。スタンダード版と日本版の比較では、北陸、関西、沖縄の3地域では日本版のエネルギー削減率が高い傾向であった。
本研究は環境省委託事業「令和2年度 低炭素型の行動変容を促す情報発信(ナッジ)等による家庭等の自発的対策推進事業(生活者・事業者・地域社会の「三方良し」を実現する日本版ナッジモデルの構築)」の一環として、日本オラクル(株)と(株)住環境計画研究所が各エネルギー事業者からの協力を得て実施した成果である。
- 論題
- ホームエネルギーレポートによる省エネ効果の地域性・持続性に関する実証研究ー介入停止後における省エネ効果の持続性検証ー
- 著者
- 平山 翔, 中上 英俊, 鶴崎 敬大, 小林 翼, 松本真輝, 小林浩人
- 掲載誌
- BECC JAPAN 2021, 2021年8月