パリ協定を踏まえ、国内における家庭部門の地球温暖化対策は喫緊の課題となっており、省エネ・省CO2を推進する上で、エネルギー消費の実態を適切に把握することが重要となっている。近年は、IoTを活用して設備機器の稼働状況等の情報をオンラインで収集し、収集した運転情報を基にエネルギーの見える化や見守りサービス等を提供する事業者が増えている。これらのデータを用いることで、従来、設備機器の使用時間等を把握するためにはアンケート調査や計測器を用いた実測が必要であったが、オンラインより得られる膨大なデータを分析することで、時間と労力をかけずに設備機器の運転状況や使用実態を詳細に把握することが可能である。本報は、使い方の実態が様々に想定されるガス温水式床暖房(以下、床暖房)に着目し、IoTを活用して床暖房ユーザーより得られる運転情報を収集し、それらのデータを基にした使用実態の分析結果について報告する。
本報では近畿地方におけるガス温水式床暖房の稼働状況等の情報を活用して使用実態を分析し、以下の知見を得た。
・床暖房設置世帯のうち 1 割弱は床暖房不使用であった。
・12~2月の寒い時期に床暖房を使用している日数は戸建世帯で約75%であり、床暖房以外の暖房設備を単独若しくは併用して使用している可能性が示唆された。
・床暖房使用世帯の使用時間は集計期間全体で5.8時間/日で、最も使用時間の長い1月は8.5時間/日であった。
- 論題
- ガス温水式床暖房の使用実態に関する研究 その1:稼働データに基づく使用時間の分析
- 著者
- 秋元孝之,水谷傑,中村美紀子
- 掲載誌
- 日本建築学会大会学術講演梗概集(関東),P1835-1836,2020年9月