(1)目的
諸外国ではエネルギー事業者が個別の家庭に対してエネルギー使用状況等の情報提供を行うことで行動変容を促し、省エネ効果が得られるという実証結果が示されてきている。中でもオラクル社(2016年にOpower買収)のホームエネルギーレポート(以下、HER)は本分野のスタンダードとなっている。日本では2016年に北陸でHERの省エネ効果を検証した事例があるが、効果の地域性・持続性は検証されていない。本実証では海外でスタンダードとなっているHER(以下、スタンダードレポート)を国内5地域に適用しその効果の地域性・持続性の検証、ならびに日本固有の状況を加味したHER(以下、日本版レポート)の開発および効果検証を目的としている。
(2)方法
国内のエネルギー事業者5社(北海道ガス、東北電力、北陸電力、関西電力、沖縄電力)の家庭用顧客を対象に、スタンダードレポート送付世帯、日本版レポート送付世帯、比較対照世帯を設定するランダム化比較試験(計約45万世帯:3群×約3万世帯/群×5地域)を実施した。スタンダード/日本版レポート送付世帯に、2017年12月から2018年3月まで計4回、レポートを郵送した後、エネルギー消費量や省エネ意識・行動の群間の差を比較した。
(3)結果
パネルデータ分析により介入効果を推定したところ、CO2削減率は送付2ヶ月後に1.2~2.0%となり5地域全てで統計的有意差が確認された。またレポート送付世帯は、非送付世帯に比べて省エネ意欲・態度や一部の省エネ行動実施率が有意に高いことが確認された。
本研究は環境省委託事業「平成29年度 低炭素型の行動変容を促す情報発信(ナッジ)による家庭等の自発的対策推進事業(生活者・事業者・地域社会の「三方良し」を実現する日本版ナッジモデルの構築)」の一環として、日本オラクル(株)と(株)住環境計画研究所が各エネルギー事業者からの協力を得て実施した成果である。
- 論題
- ホームエネルギーレポートによる省エネ効果の地域性・持続性に関する実証研究 -初年度の省エネ効果と省エネ意識・行動の変化-
- 著者
- 中上 英俊、鶴崎 敬大、小林 翼、村井 建介、ヘイグ ケン
- 掲載誌
- BECC JAPAN 2018, 2018-8