本研究では,H2O/NH3型吸収ヒートポンプ給湯機の小型化を目指し,従来の流下液膜式吸収器に換えて,ノズル噴射式,充填式の3種類の断熱吸収器を用いた場合の吸収性能とサイズの検討を行なった.
ノズル噴射式では,主にFraser et al.の理論にもとづいて微粒化のモデリングを行なった.その結果,システム側で要求される吸収器入口溶液量を1つで賄えるノズルを用いた場合でも,50 μm以下の液滴径を得ることができ,ノズル噴射口から最大60 mm程度で吸収が完了することがわかった.また,それをもとに容積を概算した結果,1.1×10-3 m3程度で十分であると考えられる.
トレイ散布式では,吸収性能解析に際して,Grant and Middlemanの液ジェット分裂条件を実験によって補正し,液柱分裂条件を与えた.その結果,アンモニア水溶液では液柱分裂距離が非常に短く,液滴が大きくなること,そのことで気液接触面積が拡大せず,1500 mm以上という非常に大きな吸収高さが必要となることがわかった.
充填式では2種類の不規則充填材を用いた場合について,Onda et al.の充填材有効濡れ率相関式を用いて,吸収性能を解析した.その結果,充填材を流下する液膜の厚さは2.5 ~ 4.8 mmと厚くなり,十分な吸収に要する充填高さと吸収器直径は,1000 mm以上と大きくなると考えられる.
ノズル噴射式は小流量で高吸収率を得るような設計に向いており,トレイ散布式と充填式は低吸収率で大量に流す設計の方が向いていると考えられる.
- 論題
- 小型吸収ヒートポンプ給湯機における 断熱吸収器の性能解析
- 著者
- 岡本洋明, 党超鋲, 飛原英治
- 掲載誌
- 日本冷凍空調学会論文集, Vol.31(2), 53. 2014.