2030年に向けてのわが国のエネルギー基本政策目標が決まった。ここに至るまでかって無いほどの時間がかかったのは、一にかかって2011年3月11日の福島第一原子力発電所の事故に起因したことによる。何とか目標が決められたのは、今年の暮れにパリで開催されるCOP21に向けて、わが国の温暖化ガス削減目標を提示する期限があったからだと思う。 もしこの期限が無かったらどうなっていたのだろうか。前回のエネルギー長期見通しでは、2030年の電源構成として再生可能エネルギー20%、原子力45%合わせて65%がCO2フリーの電源として掲げられていた。この決定に先立って時の政権下で、2020年に1990年比温暖化ガス25%削減という目標がいきなり国際舞台で表明されたことにより、この達成には年次はずれるが、2030年の電源構成目標としてこのような値が策定されたわけだ。今回は、これとは逆の順序で、まず電源構成(エネルギーミックス)を策定した上で、温暖化ガスの削減目標が決定されたことはご高承のとおりである。私には政策目標としては、まず地球温暖化防止に向けた目標を掲げ、それをどのようなエネルギーミックスで達成していくかという手順が踏まれるべきだったのではと思われてならない。
なぜこうなったのかは、申すまでもなく、原子力の地球温暖化対策における位置づけを議論することを避けてきたからに他ならない。
もう一つの温暖化対策の切り札と目される再生可能エネルギーについての議論について、これまでのような原子力か、再生可能かといった対立図式で論ずるのではなく、再生可能エネルギーの一層の普及に向けた経済性の追求に軸足を移す段階ではと思われる。原子力や他の化石燃料由来の電源と十分に競争可能な経済性が見えてくればおのずとその普及は加速するに違いないと思うからである。もちろんその際には政策的な支援はなしとしての話だが。