トピックス TOPICS

サマータイム

五月の末から六月の初旬にかけてヨーロッパに省エネルギーの調査に出かけてきた。ご存じの通りこの時期のヨーロッパは一年のうちでも最高の季節である。わが国の北海道のようにまさに春と初夏が一度に訪れるような季節でもある。会議が終わって町のレストランに出かけると、客の大半は屋外のテーブルでワイン片手にさらに大盛りになった魚介類を片っ端から平らげている。こちらも負けずに挑戦したが、ずいぶん食べ残してしまった。もったいない!時間を見たらもう夜の9時をすぎたというのにまだ外は明るいのだ。サマータイムだったのだ。折しもわが日本ではワールドカップが始まっていた。サッカー(当地ではフットボールという名の方が一般的だ)の盛んな土地柄だけあって関心の高まりは半端ではないようだ。見知らぬ土地の人々からせっかくワールドカップがあるのにこちらにいるとはもったいないと何度も話しかけられて当惑したものだった。最初の訪問国フランスと日本では7時間の時差がある(これもサマータイム時期の時差で冬には8時間となる)。午前11時半からTVの中継が始まった。日本時間では夕方の6時半ということになる。試合が始まって最初のハーフが終わる頃にはナイターの照明の明るさが色濃くなった。「そう、日本ではそんな時間なんだな暗くなるのは。」と気がついた。夜9時過ぎまで明るいことは望まなくとも、もう少し明るい時間が長い方がいいのにとぼんやりと思ったものだ。では日の出は何時頃なのだろうか?何せ時差ぼけも手伝って夜ベットに入ったと思ったらもう目が覚めている。何度これを繰り返したか定かではないが、3時、4時、5時と時計を確認したが当然外は暗い。やっと夜が白んだのが6時過ぎだったような気がする。

いつだったか、冬にやはりパリに出かけたとき雨模様の朝外はまだ暗いので安心して寝ていたら、ふと気がつくと午前8時半を回ったところだ。まだ外は暗い。車がヘッドライトをつけて通勤している様子だ。9時頃になってやっと朝らしい明るさになったのを見て驚いたことを思い出した。危うく約束の会議に遅れるところだった。

改めてサマータイムのことを考えることになった。もう10年以上もこの問題に携わって来た者としてはいささか疲れ気味だが、肩を張らずに気楽に考えてみたいものだと思う。やはり明るい時間が長いと言うことは、何より照明点灯時間は短くなりそうだ。ヨーロッパでのサマータイム導入の第一の目的は、やはりこの照明用電力の省エネだったとヒアリングした覚えがある。わが国におけるサマータイム導入による省エネルギー効果を試算したことがあるが、このときの試算では原油換算約50万klの相当の省エネが見込まれる結果となった。相当な量である。ちなみに政府の新しい長期エネルギー需給見通しの民生部門(家庭用と業務用を併せた部門)での新しい追加的省エネルギー対策効果として見込まれる省エネ量が460万klであるから、サマータイムを導入すればさらにこの11%に及ぶ上乗せが可能となりそうだ。大変大きな効果だといえよう。まさに地球温暖化防止は京都議定書調印を約束したわが国にとっては待ったなしの課題である。できることは何でも片っ端からやらないことには、とてもこの約束は達成できない。是非サマータイムも参加させてほしいのだが。それに加えて、夕方の明るい時間での新しいライフスタイルがありそうだ。是非若い人々に魅力ある提案を期待したい。

帰国してまだ時差ぼけ状態が続いている。朝明るいので起き出したらまだ4時だった。寝ているのがもったいないような日差しがまぶしかった。

同じカテゴリの最新記事

お知らせ

月刊「省エネルギー」に弊社会長の中上の論考が掲載されました。

月刊「省エネルギー」(一般社団法人省エネルギーセンター)の「知のコンパス」にて、弊社会長、中上の論考が掲載されました。 月刊「省... [続きを読む]
お知らせ

月刊「省エネルギー」6月号に弊社会長の中上の論考が掲載されました。

月刊「省エネルギー」6月号(Vol.74/No.6 2022、一般社団法人省エネルギーセンター)の「知のコンパス」(p4~p5)にて、『ACEEE国際エネルギー効率スコア... [続きを読む]
お知らせ

月刊「省エネルギー」12月号に弊社会長の中上の論考が掲載されました。

月刊「省エネルギー」12月号(Vol.73/No.12、一般社団法人省エネルギーセンター)の「知のコンパス」(p4~p5)にて、『住宅の暖房を考える』と題して、弊... [続きを読む]
お知らせ

月刊「省エネルギー」6月号に弊社会長の中上の論考が掲載されました。

月刊「省エネルギー」6月号(Vol.73/No.6、一般社団法人省エネルギーセンター)の「知のコンパス」(p4~p5)にて、『カーボンニュートラル下における家... [続きを読む]
お知らせ

月刊「省エネルギー」12月号に弊社会長の中上の論考が掲載されました。

月刊「省エネルギー」12月号(Vol.72/No.12、一般社団法人省エネルギーセンター)の「知のコンパス」(p4~p5)にて、『脱炭素社会の実現に向けて』と題... [続きを読む]

住環境計画研究所

営業時間 9:30 – 17:30
TEL:03-3234-1177
お気軽にお問合せください