ソーラークリニック

メーカー間の発電性能比較


はじめに

太陽光発電の導入にあたり、メーカーによる性能の違いは大きなポイントである。 それにも関わらず、性能について”第3者”による”まとまった”評価を目にするチャンスは滅多にない。 中立な立場で、信頼に足る情報を、それなりの数で収集することが意外に難しいという事情があるからである。

ソーラークリニックには現在、2,100件を超える、主として住宅用太陽光発電システムが「登録発電所」 として参加し、最近では月に1,400件程度の発電実績が集まっている。そして、約8割の登録発電所について、 システムメーカー名を把握している。そこで、これらのデータをもとに、メーカー別の発電性能の集計を 行う。


集計方法

発電性能の指標は、地域や設置条件の差を考慮するため、「発電指数」とする。発電指数とは、 ソーラークリニックの予測発電量(「基準発電量」と呼んでいる)を100として、発電実績を 指数化した値である。発電指数100はシステム出力係数0.7に相当する。 即ち、総合損失を30%と見込んでいる。その妥当性については過去のコラムで検討している。 各メーカーのシミュレーションでは損失の想定は様々であるが、ソーラークリニックではメーカーによる損失の差を考慮していないので、 地域・容量・方位・角度が同一であれば、予測発電量はA社製でもB社製も同じである。 なお、各発電所の予測発電量は、距離の近い3件のアメダス気象観測地点の気象データから推定している。

<注>2013年12月現在では、システム出力係数0.8とした場合の予測発電量をトップページに掲載している。

発電性能の集計期間は、2010年9月から2011年8月までの1年間とする。発電指数の集計にあたり、 規模(太陽電池容量)で重みはつけず、各発電所の発電指数を単純に平均する。集計対象は、設置からの 経過年数が1年以上3年以下の発電所とする。1年以上であることは当然として、3年以下に限定するのは、

をふまえ、シャープ、三洋電機、京セラなど先行メーカーと新興メーカーの比較をできる限り公平に行うためである。


集計結果

結果を図に示す。集計対象は全体で588件である(メーカー不詳を含む)。 発電指数のトップは、CIS太陽電池を採用しているソーラーフロンティアである。 サンプル数が18件とやや少ないため、2位との差は統計的な有意差とは言えないが、シャープ、京セラなど 結晶シリコン系太陽電池を採用する大手メーカーを上回る性能を見せている。

HIT太陽電池で知られる三洋電機が、発電指数122.9で第2位。価格が高いと言われてきたが、性能も高い。 パネル面積が小さいため、スペースがとれない屋根では、魅力的な製品といえる。第3位の長州産業は、 現在は独自の電池も販売しているが、HIT太陽電池をOEM販売してきたため、今回の集計対象の多くはHITを採用 していると思われる。

結晶シリコン系太陽電池を扱う他の4社の中では、三菱電機がやや高く第4位である。パワーコンディショナーの 効率が高いことが一因と考えられる。新興メーカーでは、サンテックパワーがシャープをやや抑えて第5位となったが、 サンプル数が小さく、同程度と見るべきだろう。京セラがやや低く、気になるところではあるが、これだけで見送るほどの 決定的な差とは言えないだろう。太陽光発電を選ぶポイントは初期の発電性能だけではなく、価格、販売・施工店の技術力、 保証内容、長期的信頼性(今のところ知る術はないが)といった他にも重要な要素があるからだ。

その他のメーカーはサンプル数が10件に満たないため、個別には示せないが、目立って良い結果や悪い結果は見られない。




留意事項

ソーラークリニックでは登録発電所のメーカー名を公表していなく、集計値の公表も今回が初めてである。 本集計結果をご覧になるにあたり、以下の点にご留意をお願いしたい。

集計に使用した発電実績や、予測発電量の計算に用いた「設置条件」(地点・方位・角度)は登録発電所の申告に基づいてる。 データの”もっともらしさ”は確認しているが、発電所が実在するかどうか、また、発電量は正しいかどうか、 について証拠の提示などは求めていない。このため、発電量が水増し登録されたり、実体のない発電所が登録されたとしても、 確実に防ぐことはできない。

ほとんどの登録発電所は、自ら登録した個人であり、ランダムに選定された訳ではない。 ソーラークリニックでは発電ランキングを公表しているため、性能に自信のある発電所が集まりやすい可能性は否定できない。 さらに最近では、ごく一部ではあるが、販売・施工事業者が自社や顧客の発電所を登録しているケースもある。 これらは営業目的と考えられるため、選別が行われている可能性を否定することはできない。

今後、継続的に集計結果を発表するかどうかは未定である。正確で、公平な情報提供が可能か否かで判断したい。

[2011.9.24]初稿
[2011.9.27]メーカーによって予測発電量が変わらない旨、追記しました。
[2013.6.9]現在は、基準発電量(予測発電量)と比較した「発電指数」をやめ、パネル面日射量と比較しています。
[2013.7.13]シミュレーションサービスを休止しました。
[2013.12.21]シミュレーションサービスを一部再開しました。